これからのゲームデザインの10のアイディア

半年前の記事だが、Guardian Unlimited*1に「Ten interesting ideas in game design: part one(直訳すれば「ゲームデザインの10の興味深いアイディア:パート1」)」という記事が載っていた。要はこれからのゲームデザインはこういう興味深いアイディアからヒントを得るのではないか、という記事だ。

この記事では以下のアイディアが挙げられている。

  • Augmented reality
    • AR、複合現実感。EyeToyなど。
  • Location-based gaming
    • GPSなどを使って現実の場所をつかってゲームをプレイする。
  • Creative gaming
    • プレイヤーが創造的なことをするゲームプレイ。マリオペイントなどが古い例として紹介されている。
  • Emotional gaming
    • 感情に訴えかけるゲームプレイ。例として日本のデートゲーム(きみしねなど)が挙げられている。
  • Personalisation
    • パーソナライズ。Xbox360での例が紹介されている。

「10のアイディア」と言いながら、何故か項目が5つしかなく、Part Twoも見当たらない。それはさておき、まあまあ妥当な例が挙げられているだろう(微妙な例もあるが)。そこで、個人的にもこれから注目のアイディアと言うものを2つほど考えてみた。

1.没入志向

これは新しいアイディアと言うわけではなくて、今後再評価されるであろうアイディアである。没入志向とは、プレイヤーがゲームの世界にどっぷりとはまるようにデザインすることである。最近のゲームで言えばRezとか、マシンで言えばVirtual Boyなどもそういうデザインを推奨していたように思う。ある意味純粋な志向である。

この考えは、実は近年否定的に捉えられている。ゲーム自体のイメージがあまりよくないのに加え、シリアスゲームやゲームの枠を超えるようなタイトルばかりが注目を集める中では、分が悪いのも仕方ない。

午後のシンポジウムで任天堂の宮本氏は、レボリューションのコントローラに関する話題の中で、ヘッドマウントディスプレイに代表される没入性の高いインターフェイスデザインのゲームを、「横から見ると、自分の子にさせたいとは思わない(笑)。遊んでいる人を見てもほほえましいと思えるような風景を作りたい」と述べている。

かの宮本氏がこんな調子なのだから尚更分が悪い。

現状このように評価が低いがゆえに、将来はまた再評価されるだろう、と言うのが私の予想である。ゲームや遊びが、本質的に没入志向を性質として持っている以上、その考えは否定できない。現状は少々過小評価されているような気さえもする。

没入志向というのは、少々ラディカル過ぎるくらいの志向だからすべてがこの流れになる、とは思わないが、まだまだ発展しがいのあるアイディアであろう、と私は思う。何年後か知らないが、任天堂からVirtual Boyの後継が出ることもあるかもしれない(横井軍平氏が否定的だったというゲームウォッチの2画面がNDSで復活したように。もちろん、没入志向デザインを生かす新しいコンセプトが必要ではあるが)。

2.こつこつ型

なんと表現すればよいか分からなかったのでこう書いたのだが、要は、学術的な研究に基づいてゲームデザインをするというアイディアのことだ。「天才のひらめき型」とは真逆のアイディアである。

これは多分に私の期待も含まれているのだが、近年のゲームデザイン研究の広がりとまとまりを見ていると、これが主流になるのも時間の問題である気がする。あいにく日本では10年以上遅れているが。黎明期であれば、凡才のひらめきでも何とかなった面もあるが、もはやそんな時代ではないわけで、大多数の天才でない人間は基礎からしっかりと学んでいくことでしかごく一部の天才に立ち向かうことは出来ない。そういう意味ではこの方向にシフトするのは当然であるともいえる。既に「塊魂」などもこの流れにあるし、確実に増えてゆくだろう。

最初のゲームは大学の研究室から生まれた、と上村氏は改めてゲームの歴史を列挙する。「そうした自由な遊びを生み出す力を大学は持っているはずだが、残念ながら日本ではそうとはならなかった。しかし、今でもそういう力を持っていると確信している。(後略)」

もっとありそうであるが、あまり思いつかなかったのでとりあえず2つだけ。

*1:英国のガーディアン誌