ビデオゲーム論小辞典「Half-Real: A Dictionary of Video Game Theory」

igda.jp経由でJesper Juul氏の新刊「Half-real: Video Games Between Real Rules And Fictional Worlds」の中で用いられている用語の定義をまとめた簡単な辞典が公開されているのを知って、早速読んでみた。

This dictionary of video game theory is a companion to my book, Half-Real. With the dictionary, I hope to provide a resource for students, researchers, teachers, and game players looking for terminological clarifications and pointers to further reading.

igda.jpの紹介では「かなりのボリューム」と紹介されているが、決してそんなにボリュームがあるとは思えない。単純に比較すれば、井上さん(id:hiyokoya)の「私家版 ゲームの批評用語 小事典」*1の方がボリューム・詳細度共に上である。比較的シンプルなので、別に奇特な方でなくとも日本語訳は難しくないだろう*2

一例を紹介すると、本の題名にもなっている「Half-Real」はこの辞典では以下のように説明されている。

Half-Real(半現実)
The duality in video games of a real set of rules governing how the game is played and a fictional world that the player imagines.
(「プレイヤーが想像するフィクションの世界」と、「どうプレイするかを司る現実のルール」が同居する、ビデオゲームの二重性のこと。)

よくコンピューターゲームに関して「仮想現実」だの「ヴァーチャル」だのと言われることがあるが、違和感を感じてならなかった。その理由として、「仮想現実」・「ヴァーチャル」と言う言葉が「現実っぽい仮想」というぐらいの意味でしかなくて、ゲームそれ自体も現実の一つである、という理解がすっぽりと抜けていたからだ*3

それに対して、この「Half-Real(半現実、半分現実)」はずっとスッキリする言葉だ。プレイヤー達は仮想の世界を想像して遊ぶ一方で、それを実現する厳密なルールがもう一方では確実に存在して初めて、ゲームが成立する。「現実っぽい仮想」ではなくて、「半分現実・半分仮想」なのだ、と言うわけだ。

ちなみに本のDiscriptionではこういう一文もある。

A video game is half-real: we play by real rules while imagining a fictional world.

ビデオゲームは半現実だ。我々がゲームをプレイするとき、仮想の世界を想像しながら現実のルールでプレイする。

なるほどである。

*1:2005-12-06リンク先修正

*2:もちろん、暇と最低限の理解があることは前提だが。

*3:「ゲームは現実ではない」というのはあくまでもプレイするわれわれの認識の上でのことであって、客観性に欠けた理解である。