ロビン・ウォーカーに聞くゲームデザインの意味(1)

igda.jpにValve社のロビン・ウォーカー氏に対する小野さん(id:kono3478)のインタビュー記事が掲載されている。その中で氏のゲームデザインに対する意見が垣間見られるのでピックアップしてみる。

娯楽をデザインすることがゲームデザインにつながる

――(前略)日本でアメリカのゲームシーンを見ていると、FPSが全盛なこともあって、ゲームデザインとはレベルデザインのことだと考えがちなんです。しかし、昨日のお話では、より広範囲なお話をされていたように思います(後略)。

ロビン:まずひとついえるのは、レベルデザインゲームデザインも、デザインという意味では同じだということです。重要なのは創造性と技術性と機能性を統合した上で、何かおもしろい物を提供することがゲームデザインにつながるんです。

まず、前提としてゲームデザインレベルデザインの関係に関して明らかにしたい。大学や専門学校などでゲームについて教える際のフレームワークとして作成されている*1IGDAカリキュラムフレームワーク[PDF]では「レベルデザイン」というキーワードこそないものの、内容を読むとゲームデザインのコアトピックの中に含まれている。つまり、マクロな概念としての「ゲームデザイン」と、それに含まれる実践的な概念としての「レベルデザイン」、という関係だ。

従って、ミクロな視点では実作業としてレベルデザインをしているが、マクロな視点から見ればそれはゲームデザインそのものであり、両者の違いは視点の差、と言うことになる。目指すところの視点の差、とも言い換えられる。ウォーカー氏が「デザインという意味では同じ」と言った背景にはこういう所があると考えられる。

さて、強調部分創造性と技術性と機能性を統合した上で、何かおもしろい物を提供することがゲームデザインにつながるに注目してみると、これは娯楽のデザイン、もしくはエンターテイメント・デザインのことを言っていることに気づく。

前半部に注目すると、「創造性と技術性と機能性を統合」と言うのはデザインそのもののことだ。日本では「デザイン」が意匠の意味ぐらいしか捉えられていないので違和感があるかもしれないが、artとengineeringの橋渡しとしてdesignがある。そうすると、ウォーカー氏は「何か面白いものを提供するデザインがゲームデザインにつながる」と言っているわけになる。「何か面白いもの」を娯楽とかエンターテイメントと言い換えると、「娯楽をデザインすることがゲームデザインにつながる」ということになるだろう。

氏はそれが重要だと言っている。つまり、レベルデザインというミクロな視点からではなくて、もっとマクロな視点、ゲームデザインよりもマクロな、娯楽のデザインからゲームデザインへと考えを繋げてゆく事が重要なのだ、と*2。「作り手である前にエンターテイナーでありたい」と常々思っている自分にとって、この部分は強く心に響くものがあった。

以後、つづく予定。

*1:同時に、学ぼうとする学生にとっての指標にもなっている

*2:と、私は読み取った。