見直しを迫られるゲーム業界勢力図

E3にて各プラットホームホルダーの新プラットホームが相次いで発表された。過去からの例に漏れず、メディアの反応といえば「SCE vs. MS vs. 任天堂」「次世代機激突、市場を制覇するのはどれか」などといった軽くデジャヴを感じるものばかりだ。所詮メディアの戯言である。

もうプラットホームホルダーを軸に業界勢力図を描くのは時代遅れではないか。この見方のままではゲームビジネスの全体像が把握できるとは到底思えない。

ひとつ例を挙げてみよう。E3で発表された各プラットホームだが、既に織り込み済みの通り、PowerPC系への統一、nVidia/ATIというPC系ビデオカードメーカーのビデオカード採用と、これまでにないほどアーキテクチャに共通点が多い。

本来、各プラットホームホルダーはそれぞれのプラットホームに独自性を持たせようとする。他社と同じようなものを出しても、それは消費者からみれば敢えて手を出す理由にならない。個性がなければ注目されることもないだろう。同じようなプラットホームならば、価格競争という企業にとって避けがたい戦略をとらざるを得なくなる(現実には、ソフトでも同じことが起きている)。ハードウェアアーキテクチャを変えるのはもっとも容易な差別化だ。

にもかかわらず、PS3XBox 360、Revolution(この列にMacとPCを加えても良い)は同じようなアーキテクチャが並ぶ。もちろん差別化ははかってくるだろうし、細かな違いはたくさんあるだろう。だが、現行世代機と比べると奇妙なほどに類似している。

各プラットホームホルダーは差別化をしたいにもかかわらず現実にはそうではないということは、そこに何らかの力が働いていると見るべきだ。各プラットホームごとの違いが少ないことでもっとも利点を得るのはどこか。

各プラットホームごとの違いが少ないということはつまり、移植が容易である、ということだ。プラットホームの選択を間違えただけで、100本売れるタイトルが10万本止まり、ということは過去よく見られた光景だ。そこで各プラットホームに満遍なくタイトルを投入し、失敗のリスクを減らす、また宣伝機会を増やす、という戦略は大手パブリッシャーによくある手である。

そう、E3で明らかになったのは次世代機の姿ではない。パブリッシャーがプラットホームホルダーを凌駕するゲームビジネスの現実という姿だ。老舗であり強力なパブリッシャー・ディベロッパーでもある任天堂のプラットホームがもっとも独自性を出しそうな含みがあり、パブリッシャー・ディベロッパーとしても歴史の浅いMSのプラットホームがPCかMacか区別がつかないような代物であることをみてもそれは明らかだろう。

そういえば各プラットホームホルダーは各プラットホームの特徴として「開発が容易」ということを口を揃えたかのように言っている。「開発が容易」ということはどういうことかといえば、PCとの連携がシームレスであるとか、他のプラットホームの開発環境との差異が少なく容易に移行できる、ということだ。開発が容易なことで喜ぶのは一見ディベロッパーのように思えるが、複数のディベロッパーと関わる大手パブリッシャーが一番喜ぶことになるだろう。ここにもパブリッシャーの力が見え隠れする。

各プラットホームホルダーは存在感を保つため、各社独自サービスに力を入れてきている。だが、未だキラーサービスと呼べるものを各社示せていない。

この流れは以前から予言されていたものの、正直、個人的にはここまで進んでいたとは思わなかった。となるともうひとつの予言、コンソール系ディベロッパーとPC系ディベロッパーの衝突というか混沌とした戦国時代が来る、というのもだいぶ信頼性が出てきた。

家庭用コンソール市場の融合的消滅は意外と早くくるのかもしれない。個人的意見だが、ワイヤレス市場がゲームビジネスの中心になると以前に推測した。もしかすると、あながち素人の邪推とも言えない時が来るかもしれない。まったくの推測だが。