携帯電話がPSPのライバルになる?

1・2年前ぐらいに日本で盛んに言われていたかのような話。コンテンツ・プラットホームとしての携帯電話は日本は特殊な市場のためある意味先を行っている。それを前提にすると、国内で最近この話をあまり聞かなくなったことを考えると、ここで言われている予想が数年後でも言われるかどうかは疑問である。

この話で興味深いのは次の部分だろう。


パネリストのほとんどは移植は最悪の問題だと話したが、バラード氏は例外だった。同氏は、Sorrentは実のところ、迅速に大量の移植を行える専門知識と能力を用意するために設立されたと語った。

「この点は以前から市場における当社の魅力的なアドバンテージとなっている。当社以外の企業が皆つぶれてしまうまで複雑な移植プロセスが続く、というのが理想の世界だ」(同氏)

当社―つまり、EAはひとつのコンテンツ・ソースから同時に複数のプラットホーム向けに展開するシステマティックな開発の仕組みを既に持っている。この話は、EAがこの仕組みをコンシューマー以外、携帯電話市場にも持ち込みつつあるということを示唆している。

携帯電話市場のようなカジュアルゲーム市場では、個々のコンテンツの単価は高く出来ない。つまり、コンテンツひとつあたりの利益は小さい。それにもかかわらず、(恐らくその仕組みを作り上げるためにある程度の少なくない投資*1が必要な)この仕組みをEAが持ち込もうというのは、数の論理でばら撒けば十分回収可能と見ているからである。そして、その数の理論でばら撒く、というのはEAが最も得意とするところだ。

記事のタイトルについて言えば、最近の行き詰った携帯電話端末と新たなワイヤレス市場を開拓しつつあるPSP&NDSを比較するまでもなく、汎用機が専用機を越えることはない。携帯電話が電話であることを捨て去らない限りそれは変わらない、というのが私見である。但し、「ビジネス」の話に限ってみてみればカジュアルゲーム市場は最も巨大な規模が見込める市場であり、そういった意味ではワイヤレス市場を凌駕することは十分に考えられる。プレイヤー層が被りそうな携帯電話とPSPという対比で見れば、ビジネス上でライバルになるし、PSPがちょっとでもへまをすれば携帯電話にあっさり市場を取られることも起こりうるだろう*2

EAがもし、ひとつのコンテンツソースから各種携帯端末、WEBゲーム、PSP向けにすぐに出せる仕組みを作ったら…。何故EAがプラットホーム・ホルダーを凌駕するぐらいの力があるのか分かるだろう。もしかすると既に出来上がっているのかもしれない。王者強し、とはこのことか。

*1:現状だけでいえばそれほどでもないかもしれないが、将来的なことを考えると個々の投資はかなり大きくなるであろう。というのも、現時点でコンテンツの肥大化を防ぐ手段がハードウェアの制約以外に存在しないからである。据え置き型とまったく同じことが携帯電話で起こりつつある。コンテンツがでかくなれば、移植の仕組みもでかくなる。そういう意味では、据え置き型は単価が高かったため何とかもってきてしまったが、コンテンツ単価が少ない携帯の場合、ビジネスモデルの破綻はすぐ目の前にある問題である。

*2:いやしかし、NDSを対比していないあたり、したたかな記事だ。