NDS/PSPの弱点というか心配な点

ここでも記述が多くなってきたように、NDSPSPの登場を控えてゲーム業界及び周辺は騒がしくなっている。それが期待感・不安感に起因するものかどうかはここでは問わない。少なくとも、1年位前の陰鬱な空気の流れていた状況に比べるとだいぶ明るくなったと思う。

しかしながら、この状況は私としては納得がいかない、というか腑に落ちない。原因は明確である。コンテンツだ。


「買わないの?」と言われましたが、買いません。理由は、特に2画面である必要性が感じられるゲーム、タッチパネルを活用したゲームが少ないからです。ただ、2画面を駆使してタッチパネル無しじゃ面白くないような難しいゲームを買うのはちょっと気が引けるので、やはり「DSには手を出さない」という態度をとってしまいます。

最近うなぎのぼりに評価を上げているNDSだが、現実はこうだ。折角のパラダイムシフトのチャンスなのに、コンテンツは旧来の延長線上にあるものばかりだ。まあ、2画面だから、タッチパネルだから、というところから発想するコンテンツもどうかと思うが、プラットホームの刷新という大きな変革期を迎えようとしているのに、プラットホームを変える張本人がその変化に対応できていないのは失笑するしかない*1PSPに関してはいわずもがな。

要するに今騒がしいのは、殆どが新ハードの登場とプラットホームの刷新(加えて新市場が誕生するかもしれないと言う私がしているような予測)だけで騒いでいる。コンテンツに関しては、ごく一部の例外を除いて騒がれていることは無い。

これは大変由々しき事態だ。エンターテイメントの顧客が何故顧客になるかといえば、エンターテイメント・コンテンツに魅力を感じたからだ。映画館の設備の良さ、音響システムの良さ、ディスプレイの性能の良さ、などのエンターテイメントを楽しむ周囲の環境を重視する人たちはもちろん居るが、全体からすれば一部の例外に過ぎない。巨大で美しい液晶とか、2画面+タッチパネルといったものは確かに魅力的ではあるが、ハコモノの環境」であることに変わりは無い。現在の状況は、この「ハコモノの環境」に騒いでいる。肝心の肝のコンテンツは…?

この現状は非常に重要な「問題提起」である。つまり、コンテンツの提供する側に、「コンテンツの魅力が失われているんじゃないの?このままじゃ未来は無いよ?」と囁いているという事だ。

  • -

コンテンツの変革が求められている訳だが、残念な事に、支障をきたしそうな心配事が幾つか既に見られる。


「楽しいおもちゃです」

基本的な話はいいのだが、最後のこの発言は私は失言だと思った。何故、この時点で「おもちゃ」という線引きをして規定してしまうのか。「おもちゃに載るコンテンツ」という規定を作りかねない。挙句の果てに、この記事では見出しにまで取り上げられてしまった。作り手にも顧客にも大きな影響のある宮本氏がこういう発言をするのは本当に残念。

(1)SCEの佐伯氏が
PSPは大人向け、DSはおこちゃま向け」と発言。

この発言からは、PSPNDSが同じ市場を食い合う、もしくは食い合って世代別に分かれる、という想定が暗にあるようだ。何故、全く新しい市場を産み出すという発想がないのだろう。作り手にそもそも新しい市場への挑戦という意識がなければ、コンテンツの変革など求めようも無い。これも残念だ。

ここで挙げたのはごく一部の例に過ぎない。不安な点はまだまだある。コンテンツの変革に対するチャレンジが不足している思わざるを得ない、それが現状である。

  • -

携帯電話という代物がある。これは機械としては中途半端な代物で論外だと個人的に思っているが、プラットホームとして見たとたんに魅力的になる。何が魅力かと言えば、コンテンツの開発と供給がオープンなことが魅力的である。これに関しては、コンピューターゲーム、特にコンシューマーは遅れている。時代遅れだ。

今日の冒頭の引用はアラン・ケイの有名な言葉だが、これをするにはハードルが高すぎる。コンテンツの変革に対するチャレンジのハードルを高く保つ事、それがどういうことなのか考えるべきだ。

追記:一人ぼっちの共鳴 | 業界ズレとはまた違う温度差という記事を見かけたので追記。

*1:裏話をしてしまえば、張本人の名前が付いていても実際の開発はセカンドパーティだったりすることもあるので、仕方ないと言えば仕方ない。