理論と実践の乖離をどう克服するか(2)

理論と実践のすり合わせに於いて、その行為が簡単でないために、理論側の進歩が進まない、というのが前回の話だった。そしてそれは実際の開発における企画段階でも同様に問題となってきたことでもあった。

最近見つけたあるツールが、この問題に光を差し込むかもしれない。そのツールとは以前に紹介したが、GameMakerというオランダ製のツールである。GameMakerの製作者、Mark Overmers氏はユトレヒト大学でゲームデザインの講義を持っている研究者である。ユトレヒト大学といえばオランダ最大の大学である。また、オランダといえば、遊び研究の祖、ヨハン・ホイジンガを輩出した地でもある。そのような背景のあるところからこのようなツールが出てきたことは大変興味深い。

GameMakerは簡単に言えばゲーム制作のRADツールである。プログラムを知らなくてもゲームを制作できる。プログラミング言語を学んだ上でさらにゲームを制作する、ということに比べれば遥かに容易である。しかしながら、仕組み(つまり、デザイン)を理解せずに制作は出来ない。逆に言えば、仕組みを学ぶ、アルゴリズムを学ぶことは可能である。

日本にあるゲーム制作ツールの多くは、何故か既にゲームデザインが成された状態で、ディテールを弄繰り回すことに終始するツールばかりである。それと比較すると雲泥の差があるが、とはいえ、それだけでは別に珍しいことでもない(日本で知られる例であればKlik&Playなどがある。開発元のClickteamはClick&Create,Jamagicなどの同様のRADツールをリリースしている。)。GameMakerが注目なのはそれが理論に基づき、さらに理論側が理論と実践のすり合わせの場で用いることができることを想定しているという点である。